宮城県の高齢化率が、令和8年の調査で初めて30%を超えました。県民のおよそ3人に1人が65歳以上という時代に入ったことになります。
数字だけを見ると重たい話に思えますが、大切なのは「では、自分の住むまちで今日から何ができるか」です。この記事では、宮城県と大崎・遠田エリアの高齢化の実際を整理したうえで、理学療法士の立場から、家庭でも地域でもすぐに始められるフレイル予防の具体策をお伝えします。
宮城県の高齢化率は30.1%に
宮城県の高齢者人口調査によると、県内の65歳以上人口は約66万900人、高齢化率は30.1%で、前年から0.4ポイント上昇しました。県全体としてはじめて30%の大台に乗ったことになります。
ただし、これは県全体をならした平均値です。市町村ごとに見ると、その差はかなり大きくなっています。
| 区分 | 高齢化率のめやす |
|---|---|
| 宮城県全体 | 30.1% |
| 最も高い市町村(七ヶ宿町・丸森町) | 45.8% |
| 最も低い市町村(富谷市) | 23.5% |
| 大崎地域 | 35.3% |
県内35市町村のうち27市町村がすでに高齢化率30%を超えており、高いところでは45%を上回ります。同じ「宮城県」でも、20ポイント以上の開きがあるということです。
大崎・遠田エリアは県平均を上回っています
私たちが拠点を置く遠田郡涌谷町を含む大崎地域は、高齢化率35.3%と県平均を5ポイント以上上回るエリアです。仙台市周辺とは前提条件が違う、と言い換えてもいいかもしれません。
このエリアで暮らしていると、次のような状況に心当たりのある方も多いと思います。
- 車がないと買い物にも通院にも行けず、免許を返納した途端に外出が激減する
- 近くにフィットネスジムやリハビリ施設がなく、運動する場所が限られる
- 子ども世帯が仙台や県外に出ており、高齢の親だけで暮らしている
- 集落の集まり自体が減り、人と話す機会が少なくなっている
実際、宮城県内のひとり暮らし高齢者は16万8,259人で、高齢者全体の25.5%にあたります。4人に1人が単身世帯という計算です。ひとり暮らしそのものが悪いわけではありませんが、食事が簡単なもので済みがちになる、体調の変化に周りが気づきにくい、といった点は意識しておきたいところです。
高齢化率が高い地域ほど「フレイル予防」が効く理由
フレイルとは、健康な状態と要介護状態の中間にあたる「虚弱」の段階を指します。加齢によって心身の活力が低下してはいるものの、適切に手を打てば元の状態に戻せるという点が最大の特徴です。
だからこそ、高齢者の割合が高い地域ほど、フレイルの段階で気づいて手を打つ意味が大きくなります。要介護になってから支えようとすると、費用も人手も一気に膨らむからです。人口あたりの介護の担い手が限られる地域ほど、「介護が必要になる前」に力を注いだほうが、結果として地域全体が持ちこたえられます。
フレイルの定義やセルフチェックの方法については、フレイルとは?理学療法士がわかりやすく解説|セルフチェック法と予防の3本柱で詳しく解説しています。まずはご自身やご家族の状態を確かめてみてください。
今日から始められる3つのこと
1. 週2〜3日、筋トレの日をつくる
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、高齢者を含むすべての成人に対して週2〜3日の筋力トレーニングが推奨されています。歩くことに加えて、筋肉に負荷をかける運動を入れる、という考え方です。
特別な器具は要りません。椅子から手を使わずに立ち座りを10回、かかとの上げ下ろしを20回、この2つを朝と夕方に分けて行うだけでも、太ももとふくらはぎに十分な刺激が入ります。テレビを見ながら、歯を磨きながらでも構いません。続けられる形にすることのほうが、内容の完璧さよりずっと大事です。
2. 毎食、たんぱく質を「見える形」で入れる
年齢を重ねると食が細くなり、ご飯と漬物、麺類だけ、といった食事になりやすくなります。しかし筋肉の材料であるたんぱく質が不足すると、どれだけ運動しても筋肉は増えません。
おすすめは、肉・魚・卵・大豆製品・乳製品のうち、どれか1品を毎食お皿に載せると決めてしまうことです。目玉焼き1個、納豆1パック、豆腐半丁、牛乳コップ1杯。難しく考えず、「今日の朝ごはんに、たんぱく質のお皿はあったか」を確認するだけで十分です。
あわせて、噛む力・飲み込む力の衰え(オーラルフレイル)にも注意してください。硬いものが食べにくい、むせることが増えた、という変化があれば、早めに歯科で相談することをおすすめします。
3. 週に1回は「予定」をつくって外に出る
フレイルは、まず「外出が減る」ところから始まることが多いと言われています。外出が減る→体を動かさなくなる→筋力が落ちる→歩くのがおっくうになる→さらに出なくなる、という悪循環です。
この連鎖を止めるのに、いちばん手前で効くのが社会参加です。地域のサロン、体操教室、公民館の講座、趣味の集まり、ボランティア。内容は何でも構いません。「その日に行く場所がある」こと自体が、運動量と会話量を同時に確保してくれます。
お住まいの地域にどんな通いの場があるかは、市町村の介護予防担当課や地域包括支援センターに問い合わせると教えてもらえます。
地域ぐるみで取り組むなら
個人でできることには限りがあります。自治体や地域包括支援センターの立場で「通いの場を立ち上げたい」「体操の中身をきちんとしたものにしたい」とお考えであれば、リハビリ専門職を活用する仕組みがあります。
詳しくは通いの場に理学療法士を|地域リハビリテーション活動支援事業の活用法と外部委託の進め方をご覧ください。
数字は変えられなくても、体は変えられます
高齢化率30.1%という数字そのものを、私たちが明日変えることはできません。けれども、その30%にあたる一人ひとりが「歩ける」「食べられる」「出かけられる」状態でいられるかどうかは、今日からの積み重ねで確実に変わります。
フレイルは、気づいたときが始めどきです。椅子からの立ち座り10回。今日の夕食にたんぱく質を1品。それだけでも、確かな一歩になります。
株式会社ナイスハビットのフレイル予防事業
当社は宮城県遠田郡涌谷町を拠点に、理学療法士が地域の通いの場・介護予防教室に出向き、運動指導と体力測定を行っています。大崎・遠田エリアを中心に、自治体・地域包括支援センター・住民グループからのご相談を承っています。
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執筆:荒川 賢太(理学療法士/健康経営アドバイザー・株式会社ナイスハビット 代表取締役)