「健康経営優良法人の認定を取りたいけれど、何から手をつければいいのか分からない」——中小企業の経営者の方から、最も多くいただくご相談です。
令和8年度(健康経営優良法人2027)の申請受付は、中小規模法人部門が2026年8月17日(月)から10月16日(金)17時まで。いま動き出せば、今年度の認定に十分間に合います。
この記事では、理学療法士として企業の健康づくりを支援する立場から、中小企業が認定を取るまでの流れと、実際につまずきやすいポイントを整理しました。
健康経営優良法人とは
経済産業省が2016年度に創設した認定制度です。従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践している法人を「見える化」することを目的としており、認定は日本健康会議が行います。
部門は「大規模法人部門」と「中小規模法人部門」の2つ。直近の健康経営優良法人2026では、大規模法人部門に3,765法人、中小規模法人部門に23,085法人が認定されました。前年(大規模3,400法人/中小19,796法人)から大幅に増えており、認定は年々「当たり前」に近づいています。中小規模法人部門の上位500法人には「ブライト500」、501〜1500位には「ネクストブライト1000」の冠が付きます。
認定を取るメリットは、認定ロゴマークを自社サイト・名刺・求人票に掲載できることによる採用力の強化、金融機関の優遇金利、自治体入札や補助金での加点、そして何より社員の定着です。人材の確保が年々難しくなるなか、「健康に働ける会社かどうか」を第三者が保証してくれる意味は小さくありません。
ステップ1:健康宣言事業に参加する
中小規模法人部門でまず必要なのが、加入している保険者(協会けんぽの各都道府県支部、健康保険組合など)が実施する健康宣言事業への参加です。これは申請の前提条件で、ここを飛ばして申請することはできません。
宮城県内で協会けんぽに加入している事業所であれば、宮城支部の「職場健康づくり宣言」がこれにあたります。もし加入している保険者が健康宣言事業を実施していない場合は、各自治体が実施する健康宣言事業への参加、あるいは自社独自の健康宣言の実施をもって代替することも可能です。
エントリー自体は難しい手続きではありません。認定を考えているなら、まずここから着手してください。
ステップ2:認定要件を自己チェックする
認定要件は5つの大項目で構成されています。
- 経営理念・方針/健康宣言の社内外への発信および経営者自身の健診受診(必須)
- 組織体制/健康づくり担当者の設置(必須)
- 制度・施策実行/17の選択項目から一定数以上を満たす
- 評価・改善/健康経営の取り組みに対する評価・改善(必須)
- 法令遵守・リスクマネジメント/自主申告(必須)
実質的な勝負どころは3番の「制度・施策実行」です。健康課題の把握(定期健診受診率・受診勧奨・50人未満事業場のストレスチェック)から2項目以上、土台づくり(ヘルスリテラシー向上、働き方改善、育児介護との両立、コミュニケーション促進、治療との両立、女性の健康、高年齢従業員への配慮)から2項目以上、具体的対策(保健指導、食生活改善、運動機会の増進、長時間労働対応、メンタルヘルス、感染症予防、喫煙率低下)から4項目以上。加えて受動喫煙対策が必須です。
ブライト500・ネクストブライト1000を狙う場合は、これら17項目のうち16項目以上を満たす必要があります。まずは通常の認定を確実に取り、翌年以降に上位認定を目指すのが現実的です。
※上記は健康経営優良法人2026の要件です。2027年度は回答負担の軽減を中心とした小幅な見直しにとどまる見込みですが、最新の要件は必ず公式サイトでご確認ください。
ステップ3:取り組みを実行し、記録を残す
多くの企業がつまずくのがここです。実態としては「やっていなかった」よりも「やっていたのに証明できない」ケースのほうが圧倒的に多いのです。
申請にあたっては、取り組んだ事実を裏づける資料の保存が求められます。社内通知のメール、研修の案内文と参加者名簿、実施風景の写真、アンケート結果——これらを後から集めようとすると、必ずどこかが抜けます。取り組みを始める時点で「記録を残す担当」を決めておいてください。それだけで申請直前の負担がまるで変わります。
もう一点。「運動機会の増進」は、多くの中小企業が空欄にしがちな項目です。ですが、ジムの法人契約のような大きな投資は必要ありません。始業前のストレッチ、階段利用の推奨、外部講師による運動セミナーの定期開催など、実施記録が残る形で継続できていれば要件を満たせます。専門家に入ってもらえば、社員の身体の変化というかたちで効果も見えてきます。
ステップ4:申請書を提出する
専用サイトで認定申請書をダウンロードし、必要事項を入力した電子データをアップロードして提出します。認定申請料は中小規模法人部門で15,000円(税込16,500円)/件です。
申請書には「認定基準適合書&申請にあたって保存すべき資料」というシートが含まれており、自社が要件を満たしているかを簡易的に自己チェックできます。提出前に必ず一度、通しで確認してください。
ステップ5:認定発表は翌年3月
審査を経て、認定法人の発表は翌年3月です。認定されると認定ロゴマークが付与され、自社サイト・名刺・チラシ・求人票などの広報活動に使用できるようになります。
なお中小規模法人部門では、他社比較を含む詳細な評価結果(フィードバックシート)が送られるのはブライト500に申請した法人のみです。それ以外の申請法人には、評価結果(適合状況)が送付されます。
2028年4月、ストレスチェックが全事業場で義務に
認定を検討するうえで、押さえておきたい法改正があります。2025年5月に公布された改正労働安全衛生法により、これまで努力義務だった従業員50人未満の事業場にも、ストレスチェックが義務化されます。施行は2028年4月1日です。
つまり、いま認定要件のために整えるメンタルヘルス体制は、遠からず「やらなければならないこと」になります。義務化を待って慌てるより、認定取得をきっかけに前倒しで整備しておくほうが、結果的に負担は軽く済みます。
認定はゴールではなく、通過点
要件を並べると事務作業の集まりのように見えますが、この制度の本質は「社員が健康に働き続けられる会社をつくること」にあります。認定は、その状態が外から見える形になったにすぎません。逆に言えば、認定のためだけに形を整えた取り組みは、翌年には続かなくなります。
私たちが大切にしているのは、現場で回る形にすることです。株式会社ナイスハビットでは、理学療法士の専門性を活かし、健康経営支援(フィジカルポテンシャルプログラム)として、認定申請の書類作成支援から、要件を満たす運動プログラム・健康セミナーの実施、効果測定までを伴走型でサポートしています。「何から手をつければいいか分からない」という段階からで構いません。
※本記事は2026年8月時点の公開情報にもとづいています。申請期間・認定要件は年度ごとに変更されるため、最新情報は健康経営優良法人認定事務局ポータルサイト「ACTION!健康経営」および経済産業省のウェブサイトで必ずご確認ください。
※「健康経営®」は特定非営利活動法人健康経営研究会の登録商標です。